## 第2次中間整理の概要政府と日本銀行は22日、日本円の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する関係府省庁・日本銀行連絡会議の「第2次中間整理」を公表した。今回の第2次整理では、(1)私法上の整理、(2)プライバシーの保護とデータの利活用/公共政策上の要請の両立、(3)民間決済手段との役割分担の3つのテーマについて具体的な検討結果をまとめている。CBDCは、デジタル化されていること、円建てであること、中央銀行の債務として発行されることの3つの要素を満たすデジタル通貨として定義されている。日本銀行は2020年10月から技術的な実証実験を進めており、2023年4月からはパイロット実験を実施中だ。2024年4月に公表された第1次中間整理では、日本銀行と仲介機関の役割分担、既存決済手段との共存・役割分担、プライバシーに対する国民の懸念への対応、法令面の対応といった主要論点が整理された。 ### プライバシー保護を重視した「二層構造」今回の中間整理で最も注目すべきは、プライバシー保護に関する考え方だ。日本銀行が利用者情報・取引情報を扱わない構造を前提とし、民間の仲介機関が日本銀行と利用者の間に立つ「二層構造」(間接型の発行形態)を採用することが基本方針として示された。具体的には、仲介機関が保持するデータを「顧客管理部分」と「台帳管理部分」に分離し、台帳管理部分では利用者情報・取引情報を扱わないシステム設計とする。これにより、中央銀行による個人情報の取扱いを最小限に抑える。一方で、AML/CFT(マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策)などの公的要請には適切に対応する必要があり、仲介機関に対して他の民間決済手段と同様の対策を求めることが検討されている。### 民間決済手段との共存がカギCBDCと民間決済手段の役割分担については、事業者へのヒアリングを実施した結果、既存キャッシュレス決済の加盟店手数料への影響を懸念する声があった一方、公的なインフラとしてデジタル決済の利活用を促進することへの期待も示された。具体的な利用形式として、以下の2つのパターンが想定されている:* **現金が主に利用される場面での活用** 一部行政サービスや小規模店舗・医療機関への支払いなど、現金と並ぶ決済手段としての利用。高齢者等にも使いやすいUI/UXの提供が重要* **相互運用基盤としての活用** 異なる決済手段間の送金の橋渡しとして機能。CBDCを通じて決済手段間の相互運用性を改善また、CBDCシステムの二次的活用として、デジタル地域通貨を発行可能な全国共通のシステム基盤として提供することで、自治体などの対応コストの低下や加盟店の増加、広域的な取組みが容易となる可能性も示された。### 法的整理と今後の展望私法上の整理については、CBDCを法貨として位置づけ、現金と同等の動的安全性を確保することが基本とされた。デジタル財産としてのトレーサビリティを活用することで、不正利用時の権利回復をより容易にし、現状の金銭より高い水準での権利保護を図ることも期待されている。今後は、日本銀行と仲介機関の役割分担(垂直的共存)、クロスボーダー決済やコスト負担のあり方といった論点についても議論を行う予定だ。利便性向上などの予想されるメリットが必要な社会的コストを上回ることを前提に、制度設計の大枠の整理に向けて検討を深めていく。なお、今回の整理は現時点での議論をまとめたものであり、CBDCの導入を予断するものではないと明記されている。実現可能性については、諸外国の動向や国内の経済・社会情勢の変化、技術面の進展等を踏まえて改めて検討することになる。
政府・日銀、デジタル円に関する第2次中間整理を公表 プライバシー保護と民間決済との共存策を検討
政府と日本銀行は22日、日本円の中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する関係府省庁・日本銀行連絡会議の「第2次中間整理」を公表した。
今回の第2次整理では、(1)私法上の整理、(2)プライバシーの保護とデータの利活用/公共政策上の要請の両立、(3)民間決済手段との役割分担の3つのテーマについて具体的な検討結果をまとめている。
CBDCは、デジタル化されていること、円建てであること、中央銀行の債務として発行されることの3つの要素を満たすデジタル通貨として定義されている。日本銀行は2020年10月から技術的な実証実験を進めており、2023年4月からはパイロット実験を実施中だ。
2024年4月に公表された第1次中間整理では、日本銀行と仲介機関の役割分担、既存決済手段との共存・役割分担、プライバシーに対する国民の懸念への対応、法令面の対応といった主要論点が整理された。
プライバシー保護を重視した「二層構造」
今回の中間整理で最も注目すべきは、プライバシー保護に関する考え方だ。日本銀行が利用者情報・取引情報を扱わない構造を前提とし、民間の仲介機関が日本銀行と利用者の間に立つ「二層構造」(間接型の発行形態)を採用することが基本方針として示された。
具体的には、仲介機関が保持するデータを「顧客管理部分」と「台帳管理部分」に分離し、台帳管理部分では利用者情報・取引情報を扱わないシステム設計とする。これにより、中央銀行による個人情報の取扱いを最小限に抑える。
一方で、AML/CFT(マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策)などの公的要請には適切に対応する必要があり、仲介機関に対して他の民間決済手段と同様の対策を求めることが検討されている。
民間決済手段との共存がカギ
CBDCと民間決済手段の役割分担については、事業者へのヒアリングを実施した結果、既存キャッシュレス決済の加盟店手数料への影響を懸念する声があった一方、公的なインフラとしてデジタル決済の利活用を促進することへの期待も示された。
具体的な利用形式として、以下の2つのパターンが想定されている:
一部行政サービスや小規模店舗・医療機関への支払いなど、現金と並ぶ決済手段としての利用。高齢者等にも使いやすいUI/UXの提供が重要
異なる決済手段間の送金の橋渡しとして機能。CBDCを通じて決済手段間の相互運用性を改善
また、CBDCシステムの二次的活用として、デジタル地域通貨を発行可能な全国共通のシステム基盤として提供することで、自治体などの対応コストの低下や加盟店の増加、広域的な取組みが容易となる可能性も示された。
法的整理と今後の展望
私法上の整理については、CBDCを法貨として位置づけ、現金と同等の動的安全性を確保することが基本とされた。デジタル財産としてのトレーサビリティを活用することで、不正利用時の権利回復をより容易にし、現状の金銭より高い水準での権利保護を図ることも期待されている。
今後は、日本銀行と仲介機関の役割分担(垂直的共存)、クロスボーダー決済やコスト負担のあり方といった論点についても議論を行う予定だ。利便性向上などの予想されるメリットが必要な社会的コストを上回ることを前提に、制度設計の大枠の整理に向けて検討を深めていく。
なお、今回の整理は現時点での議論をまとめたものであり、CBDCの導入を予断するものではないと明記されている。実現可能性については、諸外国の動向や国内の経済・社会情勢の変化、技術面の進展等を踏まえて改めて検討することになる。